《講評》

かつて存在した大英雄と同じＳＳＳ級の力を持つ少年、一之瀬シオン。これは一見Ｃ級の力しかないように見える平凡な少年が、その秘めた力で他を圧倒する物語。
――というのは嘘で、シオンは単に「本当の実力を隠している実力者」のように振る舞うことで快感を覚えるちょっと変わった男の子です……！
よくある異世界勘違い系の作品かと思いきや、いい意味で期待を裏切られた作品でした。キャッチ―なタイトル、オリジナリティのある世界観、そしてひと癖もふた癖もある登場人物たち。それらの要素のおかげでひと息で読み終えることができました。それに加えて紡がれる物語は王道であり、驚きとともに感動すらも覚えさせてくれた完成度の高い一作となります。

《講評》

「ダンジョン配信」モノは投稿作品、書籍化作品ともに増えている印象で、読者も多く人気のあるジャンルだと感じております。
その中でも、ワーウルフの少女を「娘」として育てている主人公のケントが、最強ながらも親しみやすく魅力的なキャラクターで、とても目を惹く作品になっていると思いました。
配信でバズるまでの序盤のテンポの良さと、事務所にスカウトされて人気配信者となっていくストーリー展開も、登場人物のエピソードがうまく入れ込まれており、先が気になる流れになっております。
主人公に憧れる人気配信者の美少女や、ダンジョンに隠された秘密など、主人公のケントを中心に世界観が広がっていくところも魅力的な物語でした。

《講評》

アラサーの元トレーナーが、生活習慣最悪のメタボ令嬢パトリシアに転生し前世の知識をいかしてダイエットに勤しんでいたら、なぜか周囲のイケメンたちが近づいてくる物語。
元トレーナーが前世ということもあり、無理なく痩せていくという、他にはない地道さに光るものがありました。
なにより、その痩せていく過程で異世界にはなかった器具を発明していくパトリシアの前向きさが、この作品に良いところだと思います。
たった少しの減量でも、最高の喜びとして捉えるその明るいパトリシアを、イラストでも表現したいと思わせてくれる作品でした。

《講評》

忌み子として虐げられていた少女が、捨てられた先で幸せになる本作。
生まれた時から地下に監禁され名前すら与えられなかった少女は、双子の姉が聖女に選ばれたことをきっかけに森へ捨てられてしまいます。
そこで出会った隣国の王弟イアンに保護された少女は「リル」という名をもらい、イアンが率いる騎士団と共に神獣の森で暮らすことに――。
リルは不遇な生活を送っていたにも関わらず、優しさに満ちた真っすぐな心を持っている少女でした。その美しい心が数多の大人や神獣を魅了し、愛されながら幸せに暮らす様子を温かい気持ちで拝読させていただきました。
また、神獣たちと会話できる「翻訳者」という特別な力を持っているリルは神獣と人間との懸け橋となるため奔走するのですが、その姿は大変可愛らしく癒されました。
双子の姉との関係性も本作ならではの優しさにあふれたものとなっており、読者からの見え方を意識し工夫されたキャラクター像や関係性は物語の魅力を引き立てる素晴らしいものでした。
日常生活に疲れを感じている方にオススメしたい心和む作品です。