《講評》

乙女ゲームの悪役令嬢に転生した公爵令嬢リリアナ（既に王太子の婚約者に内定）が、破滅ルート回避のため果敢に行動し成長していく本作。
一見テンプレ女性向け恋愛小説の体をなしていますが、この物語の魅力は「政治がらみの暗殺・内紛・人身売買が横行し魔物の出現数も増加するハードモードな異世界で【声が出ない＝魔法が使えない＝世界最弱に近い】はずのリリアナが無双し暗躍すること」にあると思います。
重厚な文章で綴られる戦闘魔法の描写や主要キャラクターたちの興亡――応援したいキャラクターに死亡フラグが立った時には結末まで読むことをやめられませんでしたし、他者を頼るのが苦手なリリアナが、かかわった人々の命や大切なものを守り、その結果彼女を慕う人が増えていく様子には胸が熱くなりました。
魅力的なキャラクターや世界観、設定に伏線が光る、読書好きへ薦めたくなる作品です。