【白き煌王姫と異能魔導小隊】重版御礼SS連載☆第2回

2014/1/17 未分類

こんばんは。草Pです。
先日緊急重版をした「白き煌王姫と異能魔導小隊」
重版出来を知った桐生先生がエピソードゼロ的なSSを書いてくださいました!

1月16日から5日間に渡って連載です!
本日は第2回。これまでの話はコチラ⇒【第1回】

既に読んでくださったはもちろんのこと、まだ読んでないよーという方も作品の雰囲気が伝わる内容になっておりますので、是非ご一読ください!

★☆第2回☆★
「ほらよ、頼まれておいた品。研ぎ出しておいた。――それにしても運がいいなおまえは。この剣はそうお目にかかれない相当な業物だ。エイル、おまえには過ぎた代物じゃないのか? こいつで何を狩る気だ?」
良く研がれた刃を満足げに眺めながら、エイルは答えた。
「あぁ――黒灰牙王(アシュドルグ)を倒すんだ」
エイルはそう口にした瞬間、鍛冶屋の親父の顔が引きつった。そして周囲にいた客の視線も集まる。
「お、おい正気かエイル!? なんだって黒灰牙王を!? おまえなら灰牙獣(ドルグ)を狩ってるだけで生活できるだろうに! あいつに挑んで殺されたハンターの数を知らないわけじゃないだろう!?」
血相を変える鍛冶屋に、剣を背負うエイルは笑んで見せた。
「俺はあいつを倒すために今日までやって来たんだ。灰牙獣ばかりと戦っていたのも、黒灰牙王に生態が近いからだよ――」
「だからって……一人じゃ無理だぞエイル? おまえはいつも一人だったが、なんでだ? おまえほどの腕があれば仲間なんかいくらでも――」
鍛冶屋がそういった言葉を、後からの笑い声がかき消す。
「あっはははは! おいおい親父、エイルのことを知らねぇのか?」
声をかけるのはエイルの後にいた壮年のハンター。数人からのハンター団をまとめる、この周囲でも名が知れたベテランだ。
「このエイルはハンターをやってるくせに魔導が使えないんだよ、そうだろエイル?」
「…………」
エイルは答えず、憮然として視線を落とした。
「ほ、本当なのかエイル!? そんなこと初めて聞いたぞ!?」
「……そうだよ。俺は生まれてから一度も、魔導を使えたことがない」
「ば、馬鹿野郎! そんなおまえが黒灰牙王に勝てるわけないだろうが! 死にに行くようなもんだ! 今すぐ止めろ! 考え直せ! 信じられん……今までどうやってハンターをやって来てたんだおまえは!」
「無駄だぜ親父。こいつはな……気味が悪いんだよ。仲間と狩りに行っても一人だけ無傷で帰って来る。そのくせ手柄は一番立てる……そうだろエイル?」
「…………」
「ど、どういうことだエイル、本当なのか?」
「……あぁ」
「だからこいつはいつも一人なんだよ。エイルと組みたがるやつなんかいねぇさ。怪我ばっかこっち持ちで、魔導が使えねぇから役にも立たねぇ。なのに手柄は持って行かれる、こんな理不尽なことあってたまるか」
エイルはうつむいたまま拳を握る。
「こいつに何人が裏切られて、何人が犠牲になったことか。だから、エイル、おまえもいい加減に――」
「――悪い。剣、ありがとう……大事に使うよ」
「お、おいエイル!」
代金の銀貨を置いたエイルは足早に鍛冶屋を出た。
「止めないのか! あいつ死ぬぞ!」
「今まで何度も言ってきたさ。俺たちだってそこまで非情じゃねぇ。おまえには無理だ、ハンターなんか続けられない、ってな。けどあいつはまったく聞きやしねぇ。あのザクルが命懸けで守ったのが、あんなやつだなんてな……。あいつの幸運も、これで終わりだな。運だけで勝てる相手じゃねぇよ、黒灰牙王は……」
エイルが出て行った扉を、二人はどこか悲しげな表情で見つめていた。

「くそっ……! 魔導が使えないからって……! 俺には俺の戦い方がある……誰も裏切ってないし、犠牲だって……!」
森へと向かい歩きながら、エイルは悔しさに歯を食いしばった。
そして、手の中のコインを見る。
「俺は黒灰牙王を倒すために今日までやってきたんだ……必ず勝てる。見ててくれよザクル――」
コインをしまい、エイルは森へを入って行く。仇敵、黒灰牙王が根城とする森へと――。

★☆第3回に続く……!☆★