こんばんは。草Pです。
先日緊急重版をした「白き煌王姫と異能魔導小隊」
重版出来を知った桐生先生がエピソードゼロ的なSSを書いてくださいました!
1月16日から5日間に渡っての連載です!
本日は第3回。これまでの話はコチラ⇒【第1回】【第2回】
既に読んでくださった方はもちろんのこと、まだ読んでない!という方にも作品の雰囲気が伝わる内容になっておりますので、是非ご一読ください!
★☆第3回☆★
「魔導用法(マジェスティック)――光槍射(レイ・スピアル)!」
暗い森の中を、アリーシアが放った魔導の光が照らす。
「グガッ――」
光の槍は灰牙獣(ドルグ)の胸を貫き、一撃で息の根を止めた。
「ふぅ……さすがは辺境の森。討伐指定が出ていない小物とは言え、こんなに災害獣の数が多いなんて……」
日暮れ前に森に入り、すでに数匹の灰牙獣を倒していた。この灰牙獣は資源価値が高く、一匹持ち帰ればかなりの金額になる――しかし、アリーシアはそんなことを知らない。知っていたとしても、行動は変わらない。
「どこにいるのよ……黒灰牙王(アシュドルグ)……!」
黒灰牙王――本来ならば群れる性質のない灰牙獣をまとめ上げ、人々が暮らす村などを襲っている。これが脅威となりかなり前から討伐対象として指定されていたのだった。
「危険な災害獣だってのにどうして放っておいたのよ……。だから煌王教会なんか」
ぶつぶつと文句を言いながらも、アリーシアは探索を続ける。
任意の対象を探す索敵の魔導もあるのだが、アリーシアはそれを使えない。だからこうして、地味に歩くしかないのだ。
「…………」
身体能力を強化する魔導――アリーシアの所属する魔導軍が独自に開発した魔導で、彼女は視覚を強化する。微かな光しか差し込まない森の中でも、ある程度の視界を確保することができる。
だが、夜の森独特の冷えた空気や、漂う不穏な気配までを消すことはできない。
気丈に振る舞っているアリーシアではあるが、さすがに心細さを覚える。
「あの二人も来てくれた方が早く見つかったのに……」
つい愚痴がこぼれる。他の隊員であるエルザリオとアルフレッド。どちらも優秀な能力を持っているがアリーシア同様に性格に難ありとされ、本来の所属から弾かれたところをレイホルンが集めて来たのだ。
「でも今は――一人でやるって言ったんだし」
一歩を踏み出したその時だった――
ガサッ!
「っ!?」
背後の気配にアリーシアは振り返る! そこには目を光らせた灰牙獣が迫っていた。
「ガァアアアア!」
「くっ!」
獲物を見定めた灰牙獣の動きはその大きい見た目にそぐわずに素早い。軽鎧程度ならば容易く切り裂く爪がアリーシアへと迫った。
「魔力防壁(ヴォルド)!」
かざした手から広がる魔力の盾が灰牙獣の爪を弾くと、アリーシアは飛び退いて距離を取り、詠唱を始める。
「龍詩詠唱(ドラクワードキャスト)――光よ槍となれ(レイフォールドスピアル)、魔導用法(マジェスティック)、光槍射(レイ・スピアル)!」
目を灼くような閃光と同時に放たれる光の槍が灰牙獣を貫いた。この程度の大きさの災害獣ならば、一撃で屠る威力を持つ。アリーシアが得意とする光の魔導だ。
「この短時間でこんなに遭遇するなんて……物騒な森ね本当に……」
言いながらアリーシアは無意識に剣の柄に手を置いていたことに気付いた。ふと、教官の言葉が蘇る。
『おまえは魔導に頼りすぎる。剣も使えるようにしろ。決戦を焦るな。魔導一撃で片付けようとすると隙が出来る。もっと頭を使え』
――自分の欠点はわかっているつもりだった。だけど自分ではどうすることもできない。もしかしたらこの先、この自分の欠点を補ってくれる人が現れるようなことがあったら……。
「って、そんなこと考えても仕方ないか。今は黒灰牙王を探すことに集中しなきゃ……」
軽く頭を振ると、アリーシアは探索を再開した。
★☆第4回に続く……!☆★