公式ブログではお久しぶり? な編集Kです。
『リーングラードの学び舎より』第一巻が発売されましたが、皆さんはすでに読んでいただけましたでしょうか。
改めておさらいしますと、『リーングラードの学び舎より』はオーバーラップ文庫と小説家になろうのコラボで開催するオーバーラップ文庫 WEB小説大賞で第一回大賞を受賞した作品でして、世の中には『小説家になろう』版と、オーバーラップ文庫版があります。
そこで今回は、Web版と文庫版での違いや、いえこけい先生の世界観へのこだわりなどをお聞きした、特濃のインタビューをお送りします。
内容の都合上、この記事は『リーングラードの学び舎より』第一巻のネタバレを含みます。読了後にお読み頂ければと思います。
■ヨシュアンの性格がちょっと違う?Web版とOVL文庫版の違いなど
───戦隊物など多くの作品では「主人公は赤」というイメージがありますが、ヨシュアンが赤じゃなくて青の理由はあるんですか?
いえこけい(以下、いえこ):ファーストインプレッションでしょうか。主人公が赤というイメージが最初になくて、キャラクターを作った時に色を当てはめていったんです。で、「ヨシュアンは黒かな~、腹黒いし(笑)」みたいな事も考えたんですが、黒に一番近い色が青で、性格も含めて青を起点としてキャラクター作りをしたところもあります。
───ヨシュアンのリィティカ先生への信仰(愛情?)がWeb版に比べてマイルドになっていますね。
いえこ:そこは編集Kさんに抑えたほうがいいと言われた部分です(笑)
編集K:そこの優先順位はどうか? という話はけっこうしまして……泣く泣く削っていただいた部分のひとつですね。いえこさん的には書きたかった部分だと思いますが(笑)
───他のキャラクターの性格も若干変わっていますか?
いえこ:細かいところなので言葉にするのは難しいのですが、他のキャラクターもちょこちょこと変わっています。基本的には一本道なんですが、媒体によって表現が変われば作品全体も変わっていきますので、すべてが同じという訳にはいかないでしょうね。
───ヨシュアンはWeb版ではタクティクスブロンドであることを地の文で明かしていますが、書籍版だと隠していたのもそういう事ですか?
いえこ:はい。OVL文庫版では特に最初に出す必要はなかったという理由で、すぐに変更しました。
Web小説では一番初めに読者に「この主人公は凄いやつなんだぞ!」と分かってもらわないとダメなんです。隔日で更新していたんですけど、1話ずつに見せ場、読者が驚くようなポイントを作らなければいけないので、最初に明らかにしておきました。本の場合は一冊で楽しむので、後半に持ってきてもいいかな、という媒体による表現の違いです。
■クリスの成長はヨシュアンだけでなく、他の生徒たちあってのこと
───『リーングラード』は設定をかなり作りこんでいて、例えば術式は色を基本として理論立てていますよね。
いえこ:こちらの世界に物理法則があるように、『リーングラード』の世界でも過去から続く経験則が「術式」という理論を生み出しています。
魔法はいきなり発生することはなくて、例えば「リンゴが落ちたから重力が発見された」という風に、「この術式を使ったらこれが発生する」という感じで、物理法則プラス術式理論が加わって特殊な現象を起こしているんです。
───戦闘シーンでも、「気合でどうにかする」ではなく理詰めの戦い方で納得の行く勝敗なり決着がついてます。
いえこ:戦闘シーンは中世の格闘術を基本としていて、相手を殺すことに特化しているためにとても理論的になっているので、肉弾戦であるヘグマントとの模擬戦はああいうロジックに基づいた描写になってます。
一方で術式戦は、騙し合いや力技をイメージして書いていて、相手の基礎となる理屈に対してどう騙すか、嘘をついていくかに力を入れてます。
どうあがいても人間ってナイフで挿したら死ぬんですよ。なのでどんな強力な力があっても最初の攻撃で当たれば死ぬので、どうにかしてそれを避けなきゃいけない。
「ちょっとダメージ受けてもいいから相手を殺す」とか「全くダメージを受けずに相手を制する」とか目的に応じたやり方がそれぞれにありまして、そこで戦闘のスタイルが決定されていくんです。
───戦闘が目的じゃなく、あくまで目的を達成するための手段であると。
いえこ:そうです、なので話し合いで解決できるならそうする時もあります。けれどメルサラとの場合は戦闘が起こってしまったので、とりあえずヨシュアンとしては、どうにかして無力化すればいいってスタンスですね。
───そのメルサラ自身は「戦闘」が目的になっている女性ですね。
いえこ:そういうところのアンチテーゼがメルサラだったりするんですよ。
───「メルサラが実はXXいい物が好き」というのは前からアイディアとしてはありましたか?
いえこ:はい、完全に力技だけでは勝たせるわけにはいかなかったというのはありました。でもこの戦い自体は、『リーングラード』の物語は教育がテーマなので、がっつりと書くのは後回しでもよかったんです。
どうやって勝つために努力する姿を生徒にも見せるのか、戦いすらも授業の一部にするっていう発想からああいう形になったんです。
───ヨシュアンと生徒の心の交流が全体を通して描かれていて、クライマックスシーンは胸が熱くなりました。
いえこ:基本的にヨシュアンは「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」方式で行っているので、その時にクリスティーナが本人のけじめとして自分の反発心に折り合いをつけたっていう象徴的なシーンですね。
そのおかげで他の生徒もちょっとづつ影響を受けています。二人だけではああはならなくて、その裏には生徒たちがクリスティーナを説得したっていうものもありますし、教師だけでは成り立たないってことには気をつけた部分ですね
■「ウェブ版のリデザイン的な部分も大きく、ウェブ版からお読みの方も楽しめるよう頑張りました。」
───ここからはいえこ先生のパーソナリティに迫っていこうと思います、小説を書き始めたのはいつ、どのようなきっかけで?
いえこ:一番最初に書いたのは19歳の専門学生の時でした。仲間内で製作したゲームのシナリオを書き上げたのがきっかけですね。二人の幼なじみがもう一人の幼なじみを救いにいくというファンタジー世界が舞台だったんですが、次第に小説へと移っていって、現代物からホラーに不思議系、SFと書いていきました。
───「いえこけい」という変わったペンネームですが、由来は?
いえこ:ローマ字で読んだ時に「iekokei」と回文になるというのも理由の一つですが、とにかく読者の印象に残るようなペンネームにしたいと考えた結果です。
───読書以外のご趣味は?
いえこ:『モンスターハンターフロンティア』です。一時期は廃人装備で身を包んでガッツリとプレイしていました。元々ゲーム全般が好きで、子供の頃はあまりゲームを買ってもらえなかったので、長く遊ぶことができるシュミレーションゲームばかりを選んでいましたね。
あとは山に行ったりします。山登りという感じではなくてガチのサバイバルですけど(笑)
───今後の見どころについて。
いえこ:大筋としては、生徒が試練に向かっていく姿を書いていきますが、その途中途中で生徒たちが義務教育に参加した理由や、ヨシュアンの過去といったキャラクターを支える背景がハッキリと出てくるので、そのあたりも楽しみにしていただければと思います。
───それでは、第一巻を読んでいただいた皆さんに、メッセージをお願いします。
編集K:たいへんお待たせしてしまいました。いよいよ「リーングラードの学び舎より」授業スタートです!
ウェブ版から読んでいる方も、今回新たに手に取った方にも楽しんで頂けるよう、引き続きいえこ先生、天之先生と進めていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!
いえこ:本書に目を通していただき誠にありがとうございます。
本作はウェブ版のリデザイン的な部分も大きく、ウェブ版からお読みの方も楽しめるよう頑張りました。
また書籍から目を通された方がウェブ版を読んだ場合、別のルートではこんなものもあったのかと思わせるようにしております。
最初こそ変更点は少ないのですが、徐々に大きな変化へと繋がっていくので生暖かい瞳で見守ってくだされば幸いです。
───本日はありがとうございました!
取材・文:かーず(かーずSP)・アシD(オーバーラップ文庫)