【白き煌王姫と異能魔導小隊】重版御礼SS連載☆第5回

2014/1/20 未分類

こんばんは。草Pです。
先日緊急重版をした「白き煌王姫と異能魔導小隊」
重版出来を知った桐生先生がエピソードゼロ的なSSを書いてくださいました!

1月16日から5日間に渡って連載です!
本日は第5回
これまでの話はコチラ⇒【第1回】【第2回】【第3回】【第4回】

既に読んでくださった方はもちろんのこと、まだ読んでない!という方にも作品の雰囲気が伝わる内容になっておりますので、是非ご一読ください!

★☆第5回☆★
――陽が差していると気付いた時、アリーシアは若干の眠気を感じていた。
夜通しの探索。しかも一人でのそれはかなりの精神的な疲労を彼女にもたらしていたのだ。
そのこともあり――
「うわ……」
不意に目の前に広がった泉が、アリーシアにはいつになく綺麗な物に見えた。
「そう言えば水場なんてなかったわね、この森」
そうつぶやきながら、水をすくって一口飲んでみる。歩きづめの体は汗で濡れ、火照っていることに気付いたのもこの時だった。
「……はぁ、陽が出ちゃったらもう見つからないかな……」
結局は空振りだったか――そう思うと途端に疲労感が押し寄せてきた。
すると目の前の泉がみょうに魅力的なものに見え始めてくる。
「…………」
アリーシアは周囲を見回す。茂みに囲まれた泉――陽の光を受けて輝く水面。そこからの透明度は高く、浅瀬の綺麗な砂底までが見える。
「周囲に変な様子はないし……ちょっとくらいなら大丈夫……よね」
そうつぶやくとアリーシアは剣を外し、装備帯と共に木の根元へと置く。そして再度、周囲を気にかけると黒いジャケットを脱いだ。
銀繊維製の服は重みがあるため、脱ぐと開放感がある。その勢いもあり、ためらい気味だったアリーシアも次々と服を脱いでいった。
「えっと……これも、いいかな」
髪も洗いたかったので、髪飾りにつけていた百合水晶(リリー・クリス)も外した。
一糸まとわぬ姿で、泉に腿辺りまで入る。手で水をすくい体へとかけると、冷たい水が疲労と共に熱を奪い、心地良かった。
「はぁ……」
全身を包む清涼感に、思わず笑みがこぼれたが、すぐに眉根が寄る。
「それにしても――これ、どうにかならないかな……」
と、アリーシアは気が付くと大きく育っていた自分の胸を手ですくい上げた。
「男に生まれれば良かったとまでは思わないけど……動く時邪魔なのよね……」
少し前から急激に膨らみを増した胸――。思うように動いてくれる自分の体は好きだったが、必要以上に大きくなっているこの胸が、最近の悩みでもある。
「けどエルザリオほどじゃないからまだましかな――うん?」
木々がざわつく音。――風ではない。
「だ、だれ!?」
アリーシアは咄嗟に両手で胸を覆い、音のした茂みへと声をかけた。当然のように反応はない。
「……やっぱり、風……? ちがっ!? えぇっ!?」
一瞬の出来事だった。アリーシアには森が塊となって突っ込んで来たかのように見えたが、それは違った!
黒い塊が迫る一瞬、アリーシアは見た!
「ア、黒灰牙王(アシュドルグ)!? こんな時に――きゃあっ!?」
黒灰牙王の突進を防ぐべく、アリーシアは無意識に魔力防壁(ヴォルド)を展開した――が、その巨躯からの威力を止めることは出来ず、さらには不安定な足場ということもあり、アリーシアは体当たりをまともに受け吹っ飛ばされてしまった。
「くっ……えっ!?」
吹っ飛ばされたそこは水面ではなく――崖。泉から下へと流れ落ちる、小さな滝の上へと放り出されたのだ。
「うそっ!? きゃぁあああああああ!」
放り出された体は重力に引かれて落下――。
着地の瞬間に魔力防壁を使って衝撃を相殺すれば大丈夫、落下中にアリーシアはそう考えたのだが――。
「人!? ぶつかる!? きゃぁあああああああーっ! どいてぇえーっ!」
「うぉおわぁ!?」
人がいては魔力防壁は使えない――アリーシアはそのまま、崖下にいた人物に覆い被さるようにして着地してしまった。
「うぐぐ……痛てぇ……何なんだこれ……?」
着地の衝撃は大きく、すぐには平衡感覚が戻らない。そんな中、自分に組み敷かれている人物は何かを喋っている――かと思いきや、
「生暖かい……災害獣の皮か何かか? やたらスベスベしてるな……それに、うわっ、や、柔らかい……!」
冷たい手が自分の腰を撫でたかと思うと、胸をむぎゅっと掴み込まれる感覚。
「ひゃんっ!」
「うぉっ!? そ、そこに誰かいるのか!? すまないけどこれを取って――」
「ひゃっ! や、やぁ――ちょ、ぁん、動かないで――ど、どこ触って――ひゃああ!」
その手は何度か自分の胸を揉みながら、押し上げようとしてきていた。
「うわわ! 動く!? なんだこれ! とにかくこれを取ってく……れ……?」
するとその手が今度は自分の腕を掴み、押しのけるように突き放した。
そこでアリーシアは、自分が組み敷いた者の顔を間近で見た。
黒い髪と、浅く日焼けした肌――強い意志を宿す、琥珀色の瞳――。

これが、後に異能魔導小隊と呼ばれる部隊を代表する二人、アリーシア=クロイツとエイル=クーリアの出会い。
運命を背負う少女たちと、無能な魔導士の呪われし幸運譚はこの瞬間より始まるのであった――。

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「白き煌王姫と異能魔導小隊」SS、いかがでしたでしょうか?
既に書籍を読んでくださったアナタは、1巻を再読するとまた違った趣きがあるかもしれません☆
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「白き煌王姫と異能魔導小隊」
今後ともよろしくお願いします!